台風一過の秋晴れ。清々しさを感じながら、でも熱気を帯びた午後を過ごしました。
メンバーそれぞれが持つマイプロジェクトを、連続ワークショップにし、企画者も、参加される方も、理解を深め、対話する。
今回は、わたし齋藤のマイプロジェクトのひとつ「食」をテーマにした回でした。
1日3回は必ずすること、それは「食べる」ということ。
「食べる」ために存在する、「食べもの」の裏側のことをどれだけ考えているでしょうか。
2014年はじめ、わたしはこんな本に出合いました。
『3years復興の現場から、希望と愛をこめて』わたしのこころを変えた大きな一冊です。
この中で紹介されていた今回のスピーカー、高橋博之さんに猛烈に会いに行きたくなりました。
そして、その日をそう遠くない日に実現させ、今日という日を迎えることができました。
NPO法人東北開墾代表理事『東北食べる通信』編集長の高橋博之さんをおよびして開催された
今回の工房では、高橋さんが発信し続けている言葉と、参加者の抱える「食」に対する想いが、
糸をつむぐようにまじりあい、新しい布地を作っていくような確かな感触を得ました。
“いのちの根っこ”がいなくなる
「2040年問題」
今年5月に発表された衝撃の数字を覚えているでしょうか。
有識者らでつくる民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、2040年までに全国の計896自治体で、
20~39歳の女性が半減するとした独自の試算をまとめ発表しました。
ここで名指しされた多くの地域は、一次産業を中心とした生業で、都市部に住む私たちの「食べる」ことを支えている地域です。
農業でいうと、平成25年度農業就業人口の平均年齢は66.2歳。日本の総人口の2%しかいない農業に携わる方のほとんどが50歳を超えており、
現在の主な働き手は70代以上。
2040年、それは自分たちの子どもがちょうど現在の自分たちと同じ年齢になる頃。
都市も地方も高齢化はますます進み、生産者が減り続ける日本の現実。
この現実を日々目の当たりにしている高橋さんの話は、参加者のこころにじわじわと染み込んでいました。
“しんせき”をつくればいい
「都市で生まれ、都市で育つ」そういう人が増えているといいます。
地方で生まれ、都市に憧れて上京してくる、ということが多かった昔と比べ、現在は、“じぶんの田舎”をもっている人が減っています。
実際参加者のほとんどが、東京生まれ東京育ちでした。
高橋さんは、「帰れば食うに困らない場所=じぶんのふるさと」をつくることは誰にでもできるといいます。
生産者の方と直接つながるということは、私にとって新しい切り口で、でも実は一番求めていたものだったと気づきました。
つくる人と食べる人がつながること、顔が浮かぶ関係をつくること、つまり“しんせき”をつくること。
なにかあった時に互いに助け合うことができる手触りのある関係をいまからつくっていくことは、
食べるという行為のためだけでなく、子どもたちにとってもいい影響があるのではという話も参加者からでました。
“食”はコミュニケーション
服やバッグを買うときには、素材やデザイン、機能性についてなど色々なことを教える人がいるのに、
ほぼ毎日買う“食べもの”については、誰かに聞くこともなく値段や見た目などで判断して買いますよね。
と参加者の一人が話し、一同、納得の表情を浮かべました。
自分たちの日々の行動を浮かべたら一目瞭然。スーパーには、常に売り手の人がいるわけではないし、
誰かとコミュニケーションをとりながら買い物をすることは、減っているような気がします。
『東北食べる通信』の読者たちのコミュニケーション法を聞いて、みな驚いていました。
高橋さんたちが提供する価値をベースにし、読者(食べる人)自らが、想像を超えるコミュニケーション力を発揮し、
生産者と“食”を通して繋がり続ける。
これこそが、“食”を回路にして、頭とこころのバランス=都市と地方のバランス、を取り戻すことだと、高橋さんは話してくれました。
●非常に“じぶんごと”なテーマだった。もっと自分なりの信念や考え方を反映させたいと思っていたが、
なかなか一歩踏み出せず、きっかけを見つけられずにいたけど、すごく沢山のヒントや応援をもらった気がする。アクション、小さなところから起こしていきたい。
●夫婦で「食育」について話して間がなく、非常にタイムリーで参考になりました。すべてが印象的でした。
●『東北食べる通信』入ります!
農業人口の減少、農村地域の危機、はじめて知りました。小さな一歩でもできるこがあれば支えていきたい、友人にも広めていきたいです。
●「きっかけを与えることで、読者が勝手にアクションを起こすようになった」という話。これこそが、一番力をもつ波及だと思いました。
●都市と地方、生活者と生産者が親せきになる、なれるということが印象的だった。
データなどからみると、暗い未来しか見えてこないような気がします。
しかし、「無理なくできる、未来のための関係性をいまから構築していくこと」のヒントを高橋さんからたくさん教わり、
それを参加者とともに、共有、共感、そして、自らの想いをベースにして、それを発展させることができた時間となり、
わたしも自分にできる新たな一歩を踏み出したくなりました。
次回の「食」工房は、10月23日(木)開催。
実際に農園に行き、親子で収穫体験をして、生産者の方の話を聞きます。
頭とこころ、そして身体がつながる瞬間を参加者のみなさんと分かち合えること、今から待ち遠しいです。
きゅうりをクンクン、そしてパリン
asobi基地保育にいる子どもたちは、野菜を題材にした絵本を読んで空気をあたためた後、
きゅうりを手にとり、においをクンクン。そして、パリン!
さらに、モグモグと最後まで食してくれる子どももいたそうです!
今回は、午後開催ということもあって、スヤスヤと寝てくれている子もいました。
その寝ているかわいい姿を見た時、子どもたちにとっても「安心」していられる場所を提供してもらっていることが、とてもうれしくなりました。
子どもたちも、「食」というテーマを通して、asobiを楽しんでくれました。
楽しく発見がありそして、安心できる場所をいつも提供してくれるasobi基地さんは、
KURASOU.にとっても、参加者にとっても、心強い存在です。
(齋藤 愛)